How to use Japanese make a mistake?
 
貴方の日本語、間違えていませんか?

▼△ 『ら抜き言葉』 △▼


文字が足りない『ら抜き言葉』


「見れる」「食べれる」「来れる」――「何がおかしいの?」と思う方は、もう長いこと日本全国で猛威をふるい続けている「ら抜き病」に感染しています。――と言うのは冗談ですが(笑)
実際この「ら抜き病」ならぬ、「ら抜き言葉」。症状は、動きを表現する言葉に使われるべき「ら」を使用しない、というもの。先に挙げた例も、「見られる」「食べられる」「来られる」が正しい表現です。

ただ一音抜けただけなのに、何故そんなにいけないのか、と言いますと―――実は結構大きな違いがあるからなんです。
本来、「れる」「られる」には、可能・受身・自発・尊敬などの意味があり、これらを状況によって使い分けてきました。
「(他人に)見られる」は受身の場合に。「(これなら)食べられる」は可能かどうかの場合に。「(部長は5時に帰って)来られる」は尊敬を表す場合に、と言った具合です。

ところが、『ら抜き言葉』では総て『可能』の意味になってしまいます。日本語の美である「細やかな表現」が、「ら」一音抜いただけで台無しになってしまうわけです。

それだけではなく、昨今問題になっている『敬語の乱れ』『間違い』にも、一役買ってしまうというわけで…それはちょっと問題でしょう?

一字違いで意味は大きく変わります。「たかが」と言わずに、『ら』を忘れずにしっかり言ってあげましょう!

「知らなさそうだ」は間違い?

「ら抜き」とは反対に、「さ」の音が介入して来てしまっている表現もあります
例に挙げた「知らなさそうだ」――これもまた「何がおかしいの?」と思われるかもしれません。そして「ら抜き言葉」よりも、その人数は多いかもしれませんね。

その要因は、おそらく『形容詞』です。
形容詞の「ない(無い)」の場合は、例えば「自信がなさそうだ」のように、「なさそうだ」の形になります。
これに対して、助動詞「ない」(動詞、動詞型活用の助動詞の未然形に付く「ない」)の場合は、本来の形は「知らなそうだ」のように「〜なそうだ」となります。

形容詞の「ない」「よい」が「そう」に接続する場合、語幹が一音節で音数的に不安定な為に「さ」を介入するようになったのですが、最近は助動詞の「ない」にまで「さ」の介入を許している状態、というわけなんです。

もっとも、この『助動詞+「ない」』の音に対する「さ」の介入。現在では『俗用』として認め、誤用とはみなさないようです。

抜かしたり足したり――
言語変化は多様で、一筋縄ではいかないものですね。

今、ちょっと「てにをは」が危険デス


「やむおえない」「やむ、おえない」。
「こんにちわ」「こんばんわ」

――そう書く方が、嘘のようで本当の話、増えているそうです。耳でそう聞こえるから、そう書いてしまうんでしょうが、 正しくは「やむをえない」で、「こんにちは」「こんばんは」です。

説明すると、例えば「やむをえない」。
元は『や(止・已)む事を得ず』のような言い方の「こと」が省略されたもので、動詞の連体形が体言の資格で用いられたものということになります。当然「を」は格助詞ですから、その語構成を理解していれば、現代仮名遣いにおいても「お」と書くことはありません。
中には「やむ終えない」と思っている方もいらっしゃるようで、この語の場合は格助詞がどうの、と言う前に、語源・語構成が不明になってきているのかもしれませんね。

ところが、「こんにちわ」「こんばんわ」の場合は、少し事情が異なってきます。
「こんにちは」を
漢字で書くと『今日は』になります。うっかりと普通に読むと「きょうは」と読んでしまいそうですね。
実は、「こんにちは」は元々「今日はいい日和で…」「今日は穏やかな陽気で…」などの下の部分が省略されてできたものなんです。「こんにちは」の「は」は、助詞の意識がまだ健在だと考えられて「は」と書いているわけなのです。
しかし、現代仮名遣いでは発音通り「わ」と書きますし、漫画や小説でもしばし現れるので、事実上公認されたものとみなしていいかもしれません。実際、「こんにちは」の変形版(?)の「こんちわ」「ちわー」を「こんちは」「ちは」と書くと、違和感しか感じませんから。
今は誤用の「こんにちわ」。正しいと認められる日は近そうです。

「てにをは」の誤記だけでなく、「言う」を「ゆう」と書くように、耳で捕らえた音をそのまま表記してしまう昨今。現代語の音韻に従って書き表す『現代仮名遣い』も、それに一役買っている存在なのかもしれません。
もちろん『現代仮名遣い』の中にも例外があって、「言う」を「ゆう」と書くのは誤りとしています。「やむをえない」のように、しっかりと「誤り」と指摘しているものもあるので、決して『現代仮名遣い』の存在を否定しているわけではありません。
それに、現代仮名遣いとしては誤りでも、心の底に整合性や統一への強い要求が働いてそう書きたくなる人の気持ちも分かります。
事情をわきまえた上で、「こんにちわ」や「ゆう」等は、状況に応じて使うのは、今の世の中では「有り」なのかもしれませんね。

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参考: 『問題な日本語』(大修館書店 発行/北原保雄 編) 
『恥をかかない日本語の常識』
(日本経済新聞社 発行/日本経済新聞社 編)